日本の特殊な『ハンコ文化』

 現在は、様々な生活の場面や仕事の場面等で、正式な書面手続きにはほぼ必要となる印鑑(判子・ハンコ)。

 結婚に関係する場面でも、当然、結婚相談所の入会にも押印、結婚式場やハネムーンの契約にも押印、「婚姻届」にも押印、引越しするにも押印、購入した家財を受け取る時も押印、さらには逆にお別れとなった場合の「離婚届」にも押印と、正式なものには何にでも印鑑を押すのが当然になっています。

 しかし、一旦海外に目を向けるとどうでしょう?
 世界では契約その他はすべて『サイン(署名)』というのが一般的で、様々な場面で印鑑がないと生活が出来ないような国は日本だけなのです。
 海外旅行に行ったことのある人や海外の企業と関係のあるお仕事の方ならば誰でも、日本は印鑑に関して特殊な国だということはご存じのはずです。

 菅内閣は、『デジタル化』の重要課題として『脱はんこ』を進めています(2020年11月現在)が、これまでも日本で『脱はんこ』が進まなかったのには、『日本の特殊なハンコ文化』の壁があるからです。

 ここではは少し【 日本の特殊なハンコ文化 】についてお話してみたいと思います。


 そもそも日本のハンコ文化は、いつ頃からあるのでしょうか?
 簡単に印鑑発祥の歴史から述べていきます。

印鑑発祥の歴史

 印章発祥の歴史はとても古く、世界の文明発祥と共に生まれ、世界各地で独自に発展しました。
 一番古くは紀元前5千年頃からあったようで、絵画的図案を用いて版画のような印章を使用していた古代メソポタミア文明や古代ペルシア文明などに対し、かなり遅れて、インダス文明からシルクロードを経由して古代中国を始めとした漢字文化圏に伝わったのは、紀元前4~5世紀だと言われています。
 古代エジプト文明や古代中国では印影に【文字】が用いられたのですが、日本とは異なり、中国では印鑑文化が根付くことはなく、「隋」「唐」の時代からは署名の文化が広がり、以後、中国での印鑑は「芸術」として発展してきました。
 日本で印鑑文化が根付き、独特の発展を遂げた理由には、日本は単一民族国家であったことや、日本人の苗字は種類がとても多くて重複が少なく、また画数が多く偽造されにくい文字であったうことなどが影響していると思われます。

印鑑がなければ生活出来ない国は日本だけ

 日本には「弥生時代」に当時の中国の「漢王朝」から「漢委奴国王の金印」を授けられた時に印鑑が伝わりました。 このように古くは中国から伝来したハンコ文化でしたが、日本では独自の発展を遂げ、江戸時代には、実印を登録させるための印鑑帳が作られるなど、既に「日本の特殊なハンコ文化」が社会に根付いていたようです。

 西洋では古くからサインが用いられ、日本への伝来元の中国も一般にサインまたは電子認証が用いられ、世界中で「印鑑がなければ生活出来ない国は日本だけ」ということになりました。
 印鑑登録制度についても2000年頃までは中国・韓国・台湾に辛うじて残っていたようですが、現在では登録制度は日本のみだということです。 1914年に日本から印鑑登録制度を導入した韓国も、ハングル文字は画数が少ないことから偽造が絶えず、2009〜14年の間に制度を廃止し、現在は電子認証を取り入れています。

 そして日常生活上で使用しているのは、もはや世界で<日本>と、かつての日本統治時代の影響が残る<台湾>のみというのが現状だそうです。
 ちなみに台湾では、基本的に夫婦別姓、かつ日本人ほど苗字の種類も多くないという事情により、日本の印鑑とは異なり、四角い印の中にフルネームを彫るのが一般的です。

 「ハンコ文化」が独自の発展を遂げた現代日本では、< 実印・認印・銀行印・訂正印・角印・請求印など >、印鑑の種類も目的に応じて多数あり、使い分けをしていて、法的な強制力や実務上の強制力を持ち、「印鑑がなければ生活が出来ない」特殊な国となっています。

日本の『脱ハンコ』

 そんな日本も、世界の流れに追いつくべく、企業レベルではこれまでも少しずつ「脱ハンコ」を進めていました。
 最近は、例えば生命保険の契約などでは電子サイン1つで取引が成立するようになっています。 これからも企業レベルではどんどん「脱ハンコ」は進んでいくことでしょう。

 今年(2020年)菅内閣が重要課題としている行政手続きの「脱ハンコ」は、様々な行政手続きのデジタル化を推進し、世界に追いつく為には必要なものでしょう。

 そして、行政手続の脱ハンコとデジタル化は、当然ながらこれからの婚姻届や離婚届にも変化をもたらします。 ただ、その先にある「オンライン離婚」については賛否両論あり、また開始するにあたっては様々な問題をクリアしていく必要があります。

→ →【オンライン離婚については、こちら】← ←

 印鑑の需要は確実に減少していて、印鑑専門店も現在では既に40年前と比べ3分の1にまで減少している中、当然、印鑑業界からの強い反発は出ています。
 しかし、中には頭をひねり、落款印(書や絵画に作者の証として捺印する印)などの趣味用の印鑑や、デザインを工夫した印鑑(例:文字の一部に猫)などの新しいアイデアで売上を大幅に伸ばしている印鑑業者もあるようです。

 日本がその「特殊なハンコ文化」のしがらみを乗り越え、そして多くの工夫を重ね、その良さを残しながらも「脱ハンコ」と「デジタル化」により「各種手続きの簡素化」を確実に進めることは、時代の流れからみても、国際社会としての日本のより良い未来の為には必要不可欠なことです。

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結婚相談所イトサーチKIKUCHI

オンライン離婚! 始まる??

(記事内容は、2020年10月現在の情報に基づきます)

新型コロナの影響で2020年に急速に広まった様々なオンライン化。
オンライン飲み会、オンライン会議、オンライン授業など、の広がりと共に、結婚相談所業界に関係するものでも、【→ オンラインお見合い ←】【オンラインデート】【→ オンライン結婚式 ←】など、オンライン化が広がっていています。

このような中、「婚姻届」や「離婚届」といった行政手続きにおける【脱はんこ】が強力に検討されていて、離婚すらも、賛否両論がありますが【オンライン離婚】が始まるのではないか、と言われています。 この【脱はんこ】と【オンライン離婚】について少しお話したいと思います。

国が進める、行政手続きの
<効率化・デジタル化・脱はんこ>

 2020年9月に発足した菅内閣は、河野太郎規制改革担当相の主導で、行政手続きにおける9割以上の「脱はんこ」を目指して進めている中、10月9日には上川法務大臣が、婚姻届や離婚届の押印について廃止する方向で検討していることと手続きのオンライン化も進めていくという考えを明らかにしました。

 現在の戸籍法は昭和22年に施行されたものなのですが、婚姻届および離婚届について「署名し印をおさなければならない(戸籍法29条)」と定め、夫と妻、更に証人2人の署名と押印が必要とされています。

 しかし、そもそも、婚姻届と離婚届は実印である必要はなく、認印で構わないとされている為、押印を無くすことでのデメリットは、それほど大きくはないのではないかと思われます。

『日本の特殊なハンコ文化』について 
→ → 詳しくは こちら ← ←

婚姻届・離婚届のオンライン化

 実は、婚姻届や離婚届を含めた戸籍関係のオンラインでの届け出は、既に2004年4月から制度上は可能となっているのですが、主に押印欄が障壁となり、現時点で導入している市区町村はないそうです。

 つまり、「脱はんこ」で押印欄が無くなれば、「オンライン化」も進めやすくなるということです。

オンライン化による心配な点

 「婚姻届」「離婚届」が、【脱はんこ・オンライン化】された場合、心配される点は主に二点。

 一つ目は、なりすましなど不正行為が増えるのではないか、という点。

 これには逆に、脱はんことオンライン化が進んだ方がむしろ不正行為のリスクは減る、という意見が強くあります。

 オンライン化を進める為には、本人確認の手段として、押印に代わり電子証明書を提出することが検討されているとのことで、現在よりも本人確認は厳格化され、手続きが効率化できるだけでなく、不正な届け出についても排除できて、リスクは減るという。

 ただし、これはマイナンバーカードを利用する案であることから、その普及率が全国で20%に満たない(2020年9月実績)現時点では、すぐに開始することは不可能なようだ。

 そして二つ目は、衝動的な離婚安易な離婚が増えるのではないか、という不安。

「離婚届」は「婚姻届」以上に慎重にしなければならないものですし、本来、相当期間冷静に検討したうえで結論を出さなければならないものです。

 夫婦喧嘩を全くしない夫婦はほとんどないと思われますが、激しい夫婦喧嘩のその直後に、興奮状態でスマホから簡単に「離婚届」を発信・提出できるのでは、離婚率が急増するのは目に見えています。

 実際に、離婚大国と言われるデンマークの事例では、2012年度に46%だった離婚率が、2013年7月にオンライン離婚が可能となると、2014年度には54%に膨れ上がったそうです。

 そこでデンマークの場合は、対策として、2019年4月に以下の新たな義務を新設。
 18才以下の子がいる場合には、(1)離婚成立まで3ヵ月の冷却期間を置くこと、(2)17項目のオンライン講座を受講すること。 この結果、2019年度の離婚率は35%にまで下がったとのことです。

 つまり、日本も【オンライン離婚】を開始する場合は、「衝動的な離婚・安易な離婚」を増やさない為の何かしらの対策を考え、これと共にスタートする必要があります。

 また、デジタル化先進国と言われるエストニアですら、婚姻届や離婚届に関してはオンライン手続きから除外しているにも関わらず、日本の目指す方向性はズレている、と指摘する声もあります。

オンライン離婚 は、すぐには始まらない

 このように、まだまだ様々な問題を解決せずにはスタートできない「オンライン離婚」ですので、すぐに始まるものではありません(2020年10月現在)が、流れ的には、近い将来そうなる可能性が高いことは確かであると思われます。

 ともかく、「行政手続きの効率化」とはいえ、中でも人生に多大な影響を及ぼす「婚姻届」や「離婚届」のオンライン化については、特に慎重さが求められる為、効率性よりも、とにかく【確実性と安全性】を最大限重視して、十分に検討の上開始して欲しいものです

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結婚相談所イトサーチKIKUCHI